5分間の1年分のストーリー

「ステージの高さ、同じだったな」

 

10日のライブを終えて翌日。

リハーサルを終えてコンビニへ向かう途中、
考えていたことへ思いを馳せていた。

以前は
東京・浅草 KURAWOODというライブハウスだった。
ここには一時期、よく出演させて頂いていて、
たくさんの出会いが会った場所。

今でも時々、
とはいえ一年に数回だけれど、
連絡を取って報告し合う、
今現在、海外にいる大切な仲間も出来た。
彼は彼のステージで頑張っている。

 

「ステージの場所も形も同じだったな」

 

何年前だろう。
その日のライブは出番が最後だった。
アンコールがあったのか無かったのか、
その辺はイマイチ覚えていない。

ただ全力でライブをやり終えた私は、
しばらくの間、そこに寝転んだ。
陸上選手が、全力疾走した後に、
フィールドに寝転ぶような気分だった。

 

ライブが終わりステージに座り込み、
水を飲み呼吸を整える。

火照った体を冷やそうと寝転んだステージ。

しかし残念ながらここはフィールドでは無い。
広い空なんて見えない地下のライブハウス。

太陽の代わりにライトが眩しかった。

しばらくの間ぼーっとしていた。
目を閉じていたかもしれない。

ちょうどその時に流れて来たBGMは、
タイトルは忘れたがCOCCOの曲だった。

 

「この音だ。懐かしいなぁ、長田さんだ」

 

PATHというソロアルバムの、
ギターを長田進さんが弾いてくれた。

レコーディングした時のことを思い出していた。

そしてバンドを解散させたこと。
みんな私のことが嫌いになっただろうな。
でも、それで良かったんだよな。
だって、自らそれを望んでいたんだもんな。

 

次に浮かんだのが亡くなった祖母の顔。
私は当時、まだ祖母の死を乗り越えられていなかった。

入院中のベッドの会話を思い出した。

「あや、若いうちは、たくさん苦労しなさい」

そう言って祖母は、
祖父との出会いや戦時中の疎開先の宮崎で、
母を産んだことを話してくれた。

寝転んだ時間はおそらく5分も無いだろう。
でも1年くらい考えた感覚だった。

 

「これじゃだめだ」

 

きちんと受け止めなければならない。
そして乗り越えなければならない。

そして生まれた曲。

 

“真珠道”

 

10日のライブは寝転んだりしなかったけれど、
ステージが同じで本当に嬉しかった。

私にとって大切な場所を、
大好きな人が引き継いでくれたことを、
心からありがとうと思う。

勝手な想いではあるのだけれど。

スカイツリーは相変わらず美しい。

でも私はやっぱり、

東京タワーの方が好きかなぁ。

 

どちらもそう。

どこまでも、遠くまでも、

色々な想いを飛ばしてくれそうな気がするよ。

それを受け取ってくれたら嬉しい。

それを受け取れたなら嬉しい。

 

ただ、それだけだ。

なんて尊い”それだけ”なのだろう。

 

またね。

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