さよならを告げずにさよならを

東京に出てきて、
一番長く住んだこの家。
一番長く居たこの場所。

出てきたばかりの2年間。

そのあと下高井戸、吉祥寺と転々とし、
また戻って来たこの家。

住んでいる間に、
何人がここを通り過ぎただろう。

一番初めは、
まだ結婚前の兄と一緒だった。

 

さよならを告げに
でも「さよなら」とは言わずに。

 

「ありがとうございました」

このキッチンが大好きで、
ここが居場所のように感じていた。

 

一番いい思い出。
一番辛く悲しい思い出。

 

この家が一番、
私の涙を知っている。

 

全部ここに置いて行く。

行くべき場所へ向かいますね。

 

またいつの日か。

また。

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