目が覚めたら一面、真っ白の世界だった。
泣きそうになった。
でも涙が出た理由は寒いから。
何もない真っ白の地面に足跡を付ける。
母から電話が鳴った。
「雪すごいけどだいじょうぶ?食べ物買ってあるの?」
心配してくれていた。
途中から声が笑っていた。
「あんたのことだから外に出てはしゃいでるんでしょう」
そんなことを言いながら声が少し笑っていた。
「今日はお家に居なさいよ!」と強めに言っていた。
さすがだな、と思った。
よくわかってらっしゃる。
ずっとずっと考えていることがあった。
だからせっかく降ったこの雪は、
私のために降ってくれたのだと思うことにした。
これから訪れる新しい日々。
まるで新たの門出を祝うような白。
溢れて来た自己嫌悪の”ごめんなさい”。
どこへも届くことの無い想い。
それらを全て覆ってくれているような白。
全てを洗い流してくれるような白。
夜になっても空は真っ白だった。
雪を見たときの気持ちだけは忘れられない、感動する。
やっぱり今回もそうだった。
でも。素直に大喜びしていいのか戸惑う。
電車が止まって大変な想いをしている人も居る。
車が動かなくて事故も起こってしまう。
そういう人の気持ちを考えてしまうと、
喜んでいいのかわからなくなる。
終電も無くなった頃。
夜中にお散歩をする。
小学校のグラウンド。
明日の体育の授業は出来ないだろうな。
そうか、みんなで雪だるまとか作ればいいのか。
そんなことを勝手に想像する。
雪はもう降っていなかった。
母に送ろうと思った1枚。
雪の上。
キュッキュッと足音がする。
しっかりと地に足を付ける。
気を抜いてしまうと、
よろけて転びそうになる。
だから歯を食い縛る。
しっかりと足下を確かめるように。
一歩一歩きちんと踏みしめる。
気を張っていないと雪に埋もれて、
きっと立てなくなってしまう。
でも。
このまま埋もれてしまっても、
それはそれで幸せなのかもしれない。
そんな風にも思うほどの
美しい白の世界。
きっとそれは未来の私からのギフト。
未来の私が誰よりも
今の私を知っていると思うから。
雪の気配を感じる真っ暗な部屋。
寝る前に涙が出た。
今度は寒さのせいでなく、
お布団が優しくて暖かいせいだ。