REC.8:ヤンキー座りがいいらしいよ

前の日の夜。

宿に戻って少し作業をしようと思ったが、
少しゴロンとお布団に寝転んだら、
そのまま眠ってしまっていた。

お化粧も落とさず、
コンタクトレンズも外さぬまま。
あんなにたくさん歌ったんだもん。
そりゃ、そうだよな。

元気なつもりでも疲れている。

予定よりも早めに起きたので、
久慈サンピア日立へ向かう。

本当は少し迷った。
大きなお風呂にゆったり浸かって入ること。
前回も、帰る日に大浴場に入ったので、
うんと気持ち良いのはわかっている。

迷った理由。
疲れが取れるかグッと出るか。
どちらかになるだろうから。

ちょっとした賭け。

 

身体はどうであれ、
朝からおばあちゃんたちに囲まれ、
気持ちはさっぱりとしたから、
行ってよかったと思う。

おばあちゃんたちが話していた。

「ヤンキー座りがいいらしいよ」

歌の録音の続きが始まる。
コーラスもある。
そう、西川氏のコーラスもある。

西川氏のコーラスはささっと終わった。
もっと時間がかかるかなぁと思ったけれど、
2・3回歌えば大体オッケーだった。

本番強い。

きっとたくさん練習していたんだろうな。

記念写真。

歌を何とか無事に録り終えた。
あとはコーラスがちょこっとある。

歌った分だけ声も疲れてくるし、
時間の経過と共に変化していくだろうし、
全曲録れるかな・・というところだった。

歌の録音としてはオーバーペース。

西川氏は私の喉を心配して、
「もう無理じゃない?」
「またの時でもいいよ」

「全然大丈夫だよ、いけるよ」

そう言ったけれど、
実際のところはギリギリだった。
でもどんな状態であっても、
歌えなかったことは今まで一度も無いから、
何とかなると思っていたし、
絶対に何とかすると。

ボーカルを録ってコーラスを重ねる。
そのやり方をしていたけれど、
残り3曲から変更してもらった。
メインボーカルを完成させたいと思った。

1日でこんなに歌う事は、
ボーカリストとして正解だと思わない。
声はどんどん減ってくる。
かすれるし、もちろん疲れも出る。
何よりも痛めてしまうリスクがある。

でも、この瞬間に収めたい声だと思ったから。
ちょっと意地になっていたんだな。

気に入っている写真。

 

休憩で飲み物を買いにちょっと外へ。

スタジオの斜め向かいくらいに、
食料品を売っているお店があって、
その店頭に自動販売機がある。
そこで温かい飲み物を買う。

お店の中で、おばあちゃんが眠っていた。

自販機の音でおばあちゃんが起きてしまったのかな。
こちらの方を見て笑っていた。

その後に西川氏の顔を見て、
「あー」と指を差し太鼓を叩く仕草をした。
何度も繰り返し笑っていた。
「ガンバッテー」と。

なんでわかったんだろう。

10年前くらいにレコーディングで来た時に、
このお店に一度だけ行ったことがある。
確かみかんだったかな。
何か食べ物を買ったのだけれど、
その時にほんの少しお話しただけだ。

覚えていたのかな。
思い出したのかな。
だとしたらすごい記憶力。

そうじゃなかったとしたら、
よくわからないけれど、すごい。

どちらにしてもすごいこと。

スーパーおばあちゃんだ。

 

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