私にはふたつあるのです

空を飛ぶ日。

飛ぶ前に父に手を合わせに行った。
北海道のお土産をお供えした。
祖母と伯母に会う。
元気そうな顔を見れて嬉しかった。

伯母とは色々な話をする。
沖縄の現在について、
様々な視点で観ている伯母の意見は、
刺激的だしとても納得出来る。

そして、父の話。
昨年5月に亡くなった叔父の話。

たくさん話せて嬉しかった。

夕方の飛行機。
母がお見送りに来てくれた。

少しでも長く居ることができてうれしい。
その反面、寂しい時間がやって来る。

搭乗口へ向かうために通る、
保安検査場でバイバイする。

「風邪引かないでね」

「寒いから気をつけてね」

「着いたら連絡しなさいよ」

ここでいう言葉は、
18歳から変わらない。

母にとってはいつまでも娘なのだ。

飛行機に乗って空を飛ぶ。
振り返る時間。

飛行機の時間まで、
母とコーヒーとパンを食べて話をする。

母と話をじっくりと話す時間、
たっぷりと合ったはずなのに。
何故だろう。
あまり多くを語った感じがしない。

その原因は色々ある。
まずは、テニスの”ブリスベン国際”に夢中だったこと。
サッカーの”AFC アジアカップ”に夢中だったこと。

母はスポーツ観戦が大好きだ。
滞在中に何としてもテニスを観たいと、
WOWOWを観れないかと、
サポートセンターに電話をし契約したくらいだ。

話す時間はたくさんあったし、
実際たくさん話したと思うけれど、
きっと母も同じような思いだったのだろう。

「なんか、ちゃんと話せたのかな」

そんなことを言っていた。

違うんだよな。
言葉を交わさなくても良かった。
母は何でもお見通しだから、
色々なことをわかっていた。

羽田空港が近付いて来る。

考え事をしていたらあっという間だった。

「ただいま」という場所。

「行ってきます」という場所。

私にはふたつあるのだ。

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